ECを成長させる上で、データを用いた意思決定は非常に重要です。
しかし、Shopifyの標準のストア分析だけでは断片的に数値が並んでいるだけなので活用が困難です。さらに、大きな規模のマーチャントになると複数のデータソースからデータを収集したり加工が必要となるので、データの活用の難易度がより高くなります。
このようなことからECにおけるデータを活用した意思決定は重要でありながら、実施への障壁が高いです。
それらの課題を今回紹介するShopifyQL Notebooksを用いて解決することができます。
より簡単にデータにアクセスし、単純なクエリで確認したいデータを可視化・探索できます。
今回は、そんなShopifyQL Notebooksの機能や実際の活用方法をご紹介します。
ShopifyQL Notebooksとは
ShopifyQL Notebooksとは2022年11月にリリースされたShopifyが提供するデータ探索アプリです。(現在はShopify Plusのみ利用可能)
このアプリを使用することで、自社データを探索・可視化・分析することができ、その結果を元にビジネス上の意思決定に繋げることができます。
独自のShopifyQLというクエリ言語を用いることで、ShopifyQL Notebooks内で探索から分析まで一気通貫して実施できます。
ShopifyQL Notebooksのいいところ
データの取得・可視化・分析までを一気通貫で実施できる
これまでShopifyのデータ分析を実施しようとするとデータの取得・可視化・分析でそれぞれ異なるツールを導入する必要があるなどの課題がありました。ただし、さまざまなツールを使用すると分析に対してのコストが大きくなり優先度が下がってしまう可能性があります。
ShopifyQL Notebooksでは、アプリ内でデータ取得・可視化・分析までを一期通貫で実施できるので、より分析の考察に時間を用いることができるようになります。
ShopifyQLというより直感的でわかりやすいクエリ言語が使用できる
ShopifyQL Notebooksでは、ShopifyQLという直感的でわかりやすいクエリ言語を用いて、データの探索を行います。
ShopifyQLはSQLなどのデータクエリ言語の従来の複雑さを簡素化するように設計されており、コーディングの仕方を熟知していなくても、より多くの分析ができるようになっています。
また、オートコンプリート機能が用意されているため、構文から外れることなくクエリを記述することができます。
テキストボックスを用いた考察などの追記が可能
データ分析をより有効活用するには、データから得られた知見に加えてビジネスコンテキストを追加する必要があります。そのためにShopifyQL Notebooksではデータの可視化以外にもテキストブロックを挿入することができるようになっています。
テキストブロックには、コンテンツのスタイルを設定したり、画像を加えたりすることができます。
ストア分析とShopifyQL Notebooksとの使い分けの方法とは?
Shopifyでは標準で提供されているストア分析から各種レポートを確認することができます。
ここまでShopifyQL Notebooksを紹介してきましたが、ストア分析との違いに着目しながら、ShopifyQL Notebooksの活用方法について紹介していきたいと思います。
ストア分析は既にある程度レポートの形が定められており、何を確認したいかが明確な時に便利で結果を確認したい時に有効活用することができます。例えば、昨年と比較して売り上げがどう変化したのかを確認したい時や、どこからの流入が多いのかを確認したい場合に便利です
一方で、ShopifyQL Notebooksはなぜその数値がそうなっているのかを明確にしたい時に便利なので、原因を探索・確認したい時に有効活用できます。例えば、なぜ昨年よりも売り上げが上がったのかを確認したい時や、なぜ全体の流入数が増加したのかを確認したい場合に便利です。
ShopifyQL Notebooksで売上向上のボトルネックを分析
活用方法として最初に提案できるのは、売り上げの要素分解です。
売り上げを購入数と注文単価に分解し、購入数を流入数とCVRに分解… というふうに要素をどんどん分解し、売り上げ向上のためのボトルネックを発見することができます。
それらを全てShopifyQL Notebooksで可視化し、視覚的に売り上げと各値の関係性を確認できるようになります。
仮に注文単価は上昇しているが、購入数が減少気味で売り上げが横ばいになっている場合を例に深掘りを実施していきます。
ここで課題に上がったCVRをより深く分析していく必要があります。
これらの数値の深堀もShopifyQL Notebooksで実施することができます。CVRが減少していると一言で言っても閲覧からカートに入っていないのか?カートからチェックアウトへいかないのか(カゴ落ち)?チェックアウトから購入までがスムーズではないのか(チェックアウト離脱)?など原因は複数あります。
それぞれの原因ごとに必要な対策は異なるので、原因を一点に絞り込むことで、より効果的な改善施策を行うことができるようになります。
深堀をShopifyQL Notebooksで行っていくことで、1番の改善ポイントが絞り込めます。
その改善ポイントに対しての施策を検討し、実施していく必要があります。
この際に施策に効果があったのかどうかをトラッキングし、PDCAを回す必要がありますが、それらは結果を確認になるので、ストア分析で実施することができます。
まとめ
ShopifyQL Notebooksを使用すると、直感でわかりやすいクエリ言語を用いてデータの取得・可視化・分析までを一気通貫で実施でき、データを探索することで課題発見を行うことができます。
また、既存のストア分析では結果の確認に優れており、ShopifyQL Notebooksは原因の確認に優れています。それぞれの長所を生かした活用をすることでより効率的に効果改善に繋げられます。
ぜひShopifyQL Notebooksを活用して、EC成長のための分析にお役立てください。
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寄稿者プロフィール
八百 俊哉
株式会社フィードフォース App Unityチーム
フィードフォースへ新卒入社し、データ分析チームでデータサイエンティストを担当。その後、App Unityチームに参加し、Shopifyストアのデータ分析サービス開発・新規事業開発に携わる。