OMO(Offline Merges with Online=オフラインとオンラインの融合)を実施するうえでは、ECストアと店舗のデータを一元化することが必須となります。
Shopifyでは、Shopify POSと呼ばれるPOSシステムが標準機能として提供されています。Shopify POSを活用することで簡単にECストアと店舗の連携、すなわちOMOを実施できます。
本記事では、Shopify POSの基本操作のご紹介に加えて、導入支援で多数の実績があるアパレルウェブ社の東氏に魅力や導入時の注意点をお伺いした様子をご紹介します。
Shopify POSとは?
Shopify POS(Point of Sale)とは、Shopifyが提供するPOSシステムで、ECサイトと実店舗の在庫情報や顧客データを連携させて一元管理できる機能です。
Shopify POSを活用すると、店舗スタッフやECサイト運用者の作業効率が削減されることに加えて、ユーザーにとっても会員情報が一元化されていることや購入後にストアの情報を受け取れるなどさまざまなメリットがあります。
Shopify POSは全てのShopifyプランで利用可能です。Liteプランは無料で、Proプランは1ロケーションあたり月額$89の追加料金です。
主な機能は以下の表をご参照ください。

たった4ステップでできる初期設定
※本記事のモバイル端末によるシミュレーションは、全てiPhone12で実施しています。
1.アプリストアからPoint of Saleをインストールする
「Point of Sale」のアプリのインストールはこちらから
2. インストール後、モバイル端末にアプリをダウンロードする
3.モバイルアプリで、アカウントにログインしストアと連携する
4.モバイルアプリに連携する商品を設定する。
※公開中の商品は自動で連携されます。
以上の設定で、ECサイトと実店舗で使用する端末との連携が完了です。たった4ステップで最低限の機能を使えます。
追加でプリンターやキャッシュドロワーなどの導入を実施する場合は、設定が必要となります。
Shopify POSを使った購入フローとECストアとの連携
実際にShopify POSのモバイル端末をインストールした端末から、購入が発生する場合のフローについて解説します。
購入フロー
1.商品を選択する
お客様が購入する商品を検索し、「カートに追加」を選択します。
バーコードがある商品は、バーコードを読み込むことも可能です。JANコードがない商品の場合も、自社で発行した番号をShopifyであらかじめ登録すると利用可能となります。
また、この画面では、端末を利用している店舗以外の他店舗や、倉庫の在庫状況も確認できます。
2.顧客情報の紐付け(任意)
Shopify POSでは、注文と顧客情報を紐付けることが可能です。新規のお客様の場合は、端末上で顧客情報を登録できます。
以前に実店舗もしくはECストアで会員登録をしたことのある顧客は、名前や電話番号で検索し該当顧客を選択すると紐付けることができます。
3.チェックアウト
お客様が商品を購入する場合は、チェックアウトに進みます。
決済オプションは、現金・クレジットカード・分割払いを選択できます(分割払いは、現金・クレジットカードの選択が必須です)。決済オプションが現金の場合は、お預かりした金額を入力するとお釣りも表示されます。
Shopify POSは、カードやモバイルペイメントなどの決済機能がありません。クレジットカードの場合は手動でカード番号等を入力する必要があります。決済に関しての詳細は後述します。
購入後のレシートは、メールで送付するか、別途用意したプリンターで発行します。
ECストアとの連携
上記の流れで購入が完了した注文情報や顧客データは、即時にShopifyストアに反映されます。
その他の機能
■クーポンを使う
あらかじめShopify上で登録しておいたディスカウントは、Shopify POSでも適応できます。
【クーポンコードの場合】
作成したコードをShopify POSのディスカウントを適用 > コードに入力します。
【自動ディスカウントの場合】
ディスカウントが適応されるように設定したコレクションや商品をShopify POSでカートに入れると、自動的にディスカウントが適応されます。
■返品・交換対応
返品や交換もShopify POS上で実施することができます。
【返品】
Shopify POSの注文から該当する注文を開き、「戻る」を選択します。現状、返品の際の返金方法は現金のみです。
返品後は、ECサイトの注文情報にも即時に反映されます。
【交換(Shopify POS Proのみ利用可能)】
Shopify POSの注文から該当する注文を開き、「交換」選択します。交換するアイテムを選択し、差額がある場合は徴収または返金します。
交換後は、ECサイトの注文情報にも即時に反映されます。
■ECストアのリンクをメールで送付
実店舗で購入を悩まれているお客様に対して、店舗から離れた後にECサイトで購入できるように、カートに追加した商品のリンクをメールで送ることができます。
カート > その他の操作 > カートを送信で実施できます。
その他にも、実施できることは多くございます。実現されたいことがございましたら、まずはヒアリングさせていただきながら、実施可能かどうかをお伝えいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
導入実績多数!アパレルウェブにShopify POSの疑問を聞いてみた
Shopify POS導入実績多数の株式会社アパレルウェブ様に、Shopify POSの魅力や導入の注意点など疑問を聞いてみました。ここからは、その様子をご紹介します。
スピーカー ■東幹也 氏 株式会社アパレルウェブ Shopify推進室 室長 Shopify エバンジェリスト。 ファッション・アパレル x IT企業で海外事業、越境ECを担当し、日本企業の海外進出をサポート。Shopify POSの導入にも携わる。 著作:いちばんやさしいShopifyの教本 アパレルウェブHP
Q. Shopify POSが他のPOSと比べて魅力的な部分を教えてください。
まずは、店舗だけではなくECも含めた在庫管理・顧客管理ができる点です。
また、店舗受け取りができることもShopify POSならではだと思います。標準機能として備わっているので、連動や改修の必要なく、追加費用なしで実施できます。
また、近年BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)が当たり前になり、次の概念のBORIS(Buy Online Return In Store)が注目されています。BORISとは、オンラインで購入した商品を店舗で返品するショッピングスタイルです。店舗での返品もShopify POSだと簡単に組み立てることができます。
このような新しい小売のお客様への体験提供ができる点は、Shopify POSの1番の魅力です。
Q. Shopify POS導入によって解決される経営課題を教えてください。
POSにかけるコストが削減できたというお声はよくいただきます。
既存のレジは、思っている以上に費用がかかります。その点、Shopify POSは、Shopify POS Proプランでも1ロケーションあたり月額$89と安価なため、POS一台あたり月額費用が10分の1以下になったというお客様もいらっしゃいます。
費用が抑えられたことでできることが減ったといわれるとそうではありません。むしろ、ECストアと実店舗のお客様の情報が一元管理できるようになり、CRM施策などできることが増えたというお声もいただいています。
Q.Shopify POSではできないことを教えてください。
細かい部分だといろいろありますが、日本独特の点でいうと大きく3つあります。
1つ目は、サマリーレシートをカスタマイズできないことです。サマリーレシートとは、お店が入居している館さんに提出する1日の売上結果をまとめた資料です。こちらをそれぞれの館さんに合わせてカスタマイズすることは、Shopify POSの標準機能ではできません。
弊社がご支援している店舗さんですと、Shopifyの管理画面からカバーしていますが、完全には合わせることができないので、注意が必要です。
2つ目は、棚卸しです。基幹側で棚卸しされている店舗さんは問題ないですが、Shopify POS自体には機能として備わっていません。Shopify側で実施する場合は、Shopifyアプリ「Stocky」を活用することで実現可能ですが、このアプリはまだ英語版しかないことと、端末を複数台使ったときに不具合が起きることがありますので、実用はまだ現実的でないといえます。
3つ目は、決済が使えないことです。ECストアで、Shopify Paymentなど様々な決済契約をされているかと思いますが、現状日本ではそれをそのままShopify POSで使うことができません。必要な場合は、カードリーダーなど他の決済端末を利用する必要があります。ただし、各決済端末会社との連携もできませんので、ご注意ください。
Q.Shopify POSの推奨プランを教えてください。
店舗数が数店舗ある場合や、1店舗に複数のスタッフがいる場合は、Shopify POS Proプラン(1ロケーションあたり月額$89)の利用が必要となります。
ハードウェアに関しては、弊社ではShopifyが公式に認めているスター精密社のmPOPシリーズをご提案しています。
ただ、できればキャッシュドロアを使わずに、デジタルな決済のみにしてレシートもメールで送り、お客様のデジタルIDをしっかり集める施策も考えることが重要だと考えます。
どういう使い方をするのかや、現状どのようにPOSレジを運用されているかによって最適なプランは変わってくるかと思いますので、ご検討される際はまずはご相談いただければと思います。
Q.日本でも問題なく使えますか?
はい。弊社でも導入をご支援の実績があるように、日本でも問題なく使うことができます。
例えば、先日「American Eagle」さんの導入・運用をご支援させていただきました。現在、渋谷と池袋の各店舗で4台ずつ活用しています。店舗スタッフさんはPOSとは別に小さなタブレットを使用して、お客様の情報をお聞きして会員登録を促しています。
また、ブルーミング中西株式会社の「CLASSIC the Small Luxury」様でもShopify POSをご利用されています。こちらの店舗は、ハンカチを販売しており、購入時にカスタマイズでモチーフやイニシャルなどの刺繍を入れられます。
それらのカスタマイズの内容をShopify POS上で登録をしたり、カスタマイズのオプションを計算して決済をしたりもしています。
ブルーミング中西様は、明治12年創業の老舗の企業ですが、そのような企業様でもShopify POSをご利用されていることは、日本でも問題なく使える最適な事例ではないでしょうか。
Q.POS移行時の注意点はありますか?
1つは、ERP(基幹システム)と既存のPOSが連動している場合は、ERP側の改修も必要になる点です。Shopify POSを導入する場合は、Shopify側での開発はほとんどありませんが、ERP側の改修で莫大な費用がかかる可能性もあります。開発を最小限に抑えるための工夫は、パートナー企業と相談しながら進めるとよいかと思います。
もうひとつは、複数店舗ある場合に全ての店舗で一気に導入しないことです。まずは、1店舗で2〜3ヶ月オペレーションをまわして、スタッフからのフィードバックをもらって改善を繰り返し、形を作ります。そして、導入が決まれば最初の店舗のスタッフが、別の店舗のスタッフにレクチャーしていくと導入もスムーズになりオススメです。
まとめ
今回は、アパレルウェブ様も交えて、Shopify POSの基本的な操作方法や魅力・注意点などをご紹介しました。POS選定時にお役立ていただけますと幸いです。
ただ、Shopify POSは簡単に店舗とECストアの連携を実現できますが、日本の商習慣に合わせた機能が不足している部分も多くございます。
もしも、日本に合わせたPOSをご希望される場合は、「スマレジ」を選択いただき、「Omni Hub」や「ロジクラ」というアプリを利用して、Shopifyと顧客情報や在庫を連携させる選択肢もございます。
どの選択肢が最適かは、各企業様によって変わってくるかと存じます。App Unityでは、状況を詳しくヒアリングしながら1社1社に合わせたご提案を実施しておりますので、POSの選定にお困りの際はぜひご相談ください!

寄稿者プロフィール
東口 美睦
株式会社フィードフォース App Unity支援チーム
フィードフォースへ新卒入社し、データフィード管理ツール「dfplus.io」のセールスを担当。その後、App Unity支援チームに参加し、Shopifyストアの集客やCRM運用の支援サービス・App UnityのYouTubeチャンネル開設に携わる。