2022 年 12 月 9 日に『ノーコードでコマースをつなぎなおす「Shopify Flow × TēPs セミナー」』が開催されました。最近、よく耳にするようになった「ノーコードツール」が、コマースの未来にどのような変化をもたらすのかを 3 人の登壇者で語り合いました。

Shopify エバンジェリストである株式会社フラクタの河野氏がモデレーターとなり、Shopify Flow の活用法について研究・情報発信を行う株式会社リワイアの加藤氏、EC 特化ノーコードツール「TēPs(テープス)」のマーケティング責任者である堤氏が、2 つのノーコードツールの特徴や違いなどを実際の活用事例も交えて紹介しています。

当日の様子をレポートにまとめましたので、ぜひご一読ください。

▼セミナーのアーカイブ動画はこちらから

Shopify Flow と TēPs とは?

Shopify Flow とは?

https://apps.shopify.com/flow?locale=ja
  • Shopify が公式で提供するオートメーションツール
  • スタンダードプラン以上で利用可能で無料
  • 「顧客を作成」のようなイベントをトリガーにして運用を自動化

Shopify Flow は 3 つのコンポーネントで構成されています。

  • トリガーというイベント発生
  • それに対して、何かをするアクション
  • トリガーとイベントの間に挟まる、コンディション
    (こういう時だったらという条件を指定する)

加藤)これらを線でつなぐと物語のようにつくれます。たとえば、注文の中の商品が 〇〇 だったらオーダーのタグを付けたりできます。

オペレーションで困ったことがあれば、「Flow で自動化できないか?」と考えられるといい。使わない手はないです。

Shopify Flow の操作の様子(7:20 頃)

Shopify Flow の活用例

  • 顧客の登録が行われたら会員ランクのタグをつける
  • 注文の中の商品が 〇〇 だったらオーダーのタグをつける
  • アプリとアプリを連携させる

Shopify Flow の苦手なこと

  • 定期実行(毎日 0 時に何かするのが難しい)
    ※定期実行は β リリース中。2023 年以降、実装される予定。
  • メタフィールドがテキストでしか使えない
  • お買い物途中のデータにしかアクセスができない
  • Flow としてつながっているアプリが限定的なので制約がある

また、全ての記載が英語であることも、多くの方にとってのハードルであると言及されました。

加藤)「注文」「顧客」「プロダクト(商品)」という 3 つのリソースを選択した時に、めちゃくちゃ沢山の項目が選べます。名前とか ID とかいつ公開されたかとか。何階層もくだることがあって、それを探すときに、英語だと心が折れそうになります。

TēPs とは?

  • 国内の EC 事業者さん向けのノーコードツール
  • Shopify に限らず、Amazon、楽天、ヤフーやネクストエンジンなど、さまざまなサービスと連携
  • 時間がトリガーになっていて、最短 15 分間隔で定期実行が可能
TēPs でできることの一覧(15:45 頃)

堤)各接続先でできることが多く、毎月パーツを 3~4 個追加しています。Shopify も 2022 年 7 月にリリースして、始めは 1 つだけだったが、順次増やしています。今後にも期待していただきたいです。

日本のサービスなので、項目名も Shopify の日本語の管理画面に合わせています。Shopify だと海外製のアプリが多く、CSV ファイルをダウンロードしたときに英語で見にくいなどあるが、そのあたりは日本の人には使いやすいかなと思います。

加藤)TēPs を見た時にめちゃくちゃ感動しました。「これ中に書いてある内容を、そのまま日本語で選択できるじゃん」って。

TēPs の活用例

  • 注文に含まれる商品に応じて、出荷元の倉庫を振り分け
  • 未入金の案内をお客様に自動で通知
  • 楽天スーパーSALE の開始・終了タイミングに商品名や価格を自動で変更
  • 注文に含まれる商品に応じて、Google スプレッドシートに書き出し

視聴者の方から「卸先への在庫共有と出荷実績(追跡番号)共有に TēPs 利用予定です!BtoB 要件でも使えそうだなと思っています。」というコメントもありました。

河野さんが視聴者の質問を紹介しながら進行

TēPs と Shopify Flow をどう使い分けて、どう組み合わせる?

トリガーの違いを上手く活用

加藤)TēPs は定期実行ができるので、Shopify のアクションが何も起きてなくても実行ができます。Shopify Flow は「注文された」などのアクションがトリガーになるので、深夜 0 時に Flow を起動することができなかったが、TēPs だとできます。

会員ランクはハマるポイントで、イベントベースで購入時の金額でつけるのだったら Flow、今月の購入金額でランクをつける場合は TēPs と組み合わせるしかないです。合計金額を出すのは Flow だとできないけど TēPs なら可能です。

何かしらの該当するプロダクトを全部変えるとか、該当するお客様に定期的にメッセージを送りたい場合に TēPs は強いです。

Shopify Flow の微妙に手が届かないことを TēPs で補う

堤)Shopify の作業だと Flow の方が得意なケースが多いですが、微妙に手が届かないところがあります。例えば、フルフィルメントされてない注文が 1 ヶ月滞留したら社内の LINE に通知するなど。

他には、SKU の数が多い場合、Google スプレッドシートに SKU を並べて在庫数を書き出したり、Google スプレッドシートに用意した SKU ごとの在庫数のしきい値を下回ったら通知したりなど。Flow でも在庫数の変動トリガーはありますが、SKU が多い場合は Google スプレッドシートで管理したい方もいるので。

TēPs と Flow を組み合わせて集計項目を追加

加藤)TēPs と Flow が直接は連携できていないけど、オーダーが入った時に Flow でタグを付けておいて、タグがついたものを 1 日の最後にTēPs で集計するとコードを書かなくても、集計の項目を増やすことができます。

定期購入してくれた人が何人増えたとか、注文の中でも一定のジャンルに入っている商品を、何個以上・いくら以上の人にタグ・メタフィールドを付けて管理することで、TēPs で集計する内容を変化させるということができます。

Shopify Flow と TēPs の違いや組み合わせ方の紹介をしながら、
ノーコードツールへの取り組み方についての話へ

ノーコードツールにどう取り組んだら良いか?

プログラミングをやったこと無い方にも使ってもらいたい

堤)ノーコードツールを触ったことが無い方にも触ってみていただきたいと思っています。

業務効率化、自動化という利益を訴求しがちだけど、TēPs は触る楽しさも伝えたいというプロダクトの想いがあります。

先日、サポートをさせていただいた企業さんでは、プログラミングをしたことがない方が 1 からワークフローをつくり、はじめて動かして Google スプレッドシートに注文が書き出された時に「おぉーっと」という感動がありました。

やったことが無い人ほど感動があるので、難しそうと離れるんじゃなくて、軽い気持ちで触ってみて欲しいですね。

要件が難しくても諦めないでほしい

加藤)Shopify を使う上では、できるかぎり個別の開発をしないのが大事だったりするので、Flow や TēPs でできる事であれば諦めずに、プラスでこれを使うことでできるという体験を Shopify では享受してほしいです。

要件が難しくなってくると、要件を諦めるか頑張ってカスタマイズするかになっちゃうけど、その間に TēPs と Flow はある。この部分ってすごいニーズがあります。

使って「こういうことできるかな?」と思うけど、やれないマーチャントさんが多い。こういう部分はお仕事になるというか、実際にニーズが市場にあるので、実際の構築にプラスしてこの部分ができるようになると色んな価値が生まれると思います。そこで生まれた価値をアプリで実装するパートナーが出てきたりすると思います。

EC 業界がたくさんショップが増えるだけじゃなくて成長・グロースするフェーズになるために使えると強いです。

これできるんだっけというものは Twitter とかにつぶやいて欲しい。僕の方でこれはできますとか返せると思うので。それは TēPs でできますとか Flow でできますとか。ぜひ、ご相談いただけたらと思います。

まとめ

Shopify Flow と TēPs はトリガーや連携サービスが異なることから、どちらかが良いかではなく、組み合わせることでコマースの運用を自動化できることがわかります。

どちらも難しいプログラミングコードを書くことなく自動化が実現できるため、この機会にノーコードツールの世界をのぞいてみませんか?

▼Shopify Flow

https://apps.shopify.com/flow?locale=ja
https://apps.shopify.com/flow?locale=ja

▼TēPs

https://teps.io/

▼動画の全編

221221_Shopify_TēPs_seminar_report
ノーコードでコマースをつなぎなおす「Shopify Flow ✕ TēPsセミナー」

登壇者紹介


株式会社リワイア 代表取締役
加藤 英也

海外の大学を卒業後、株式会社サイバーエージェントにて営業からエンジニアに転向。広告の配信システムやターゲティングシステムの開発に従事。その後、三井物産子会社である株式会社 Legoliss 取締役として CDP・データ分析ビジネスの開発を担当。2020 年 12 月にフィードフォース子会社のリワイアへ参画(取締役)、2022 年 3 月より代表取締役(現任)。Shopify におけるコマーステック領域にてアプリ開発や各種インテグレーション事業を展開。

株式会社フラクタ 代表取締役
河野 貴伸

2000 年からフリーランスの CG クリエイター、作曲家、デザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にデジタルコミュニケーション設計、ブランティングを手がける。現在は「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体と 国内ブランドへの支援活動及びコマース業界全体の発展とリテールテックの普及をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。

テープス株式会社 マーケティング責任者
堤 健一郎

市場調査会社、CRM マーケティング支援会社を経て、ヤフー株式会社で Yahoo! ショッピングのマーケティング本部にて売上の分析やキャンペーン計画の作成、広告出稿などの業務を担当。
2021 年 11 月より TēPs 事業のマーケティングを担当し、EC 事業者の業務自動化や効率化に関する情報発信を行う。