現地時間 2023年7月26日(日本時間:7月27日午前0時)に、Shopify Editions Summer ‘23が発表されました。Shopify Editionsとは、Shopifyの最新製品やイノベーション、機能アップデートを、年に2回リリースされるプログラムで、Shopify Editions Summer ‘23では、100種類以上の機能がリリースされました。

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自動的に生成された説明

Shopify Editions Summer ‘23が発表された日の朝に、Shopify Japan株式会社とディスカッションの機会を頂き、今回のShopify Editionsの注目機能について解説していただくことができました。

中でも、App Unityブログでは、日本で使える注目の機能に加えて、特に開発者やデベロッパー向けの技術寄りのトピックについてご紹介します。

Shopify Japan株式会社のブログでは、Shopify Editions Summer ‘23の全体像とHero Productsについてご紹介しています。

【スピーカー】

Shopify Japan株式会社
   パートナーシップ責任者 徳満 泰彰氏
   シニアパートナーソリューションエンジニア 岡村 純一氏

株式会社FRACTA 
   代表取締役 河野 貴伸氏

株式会社リワイア
   代表取締役 加藤 英也氏

株式会社フィードフォース 
    App Unity支援チーム  事業開発責任者 水野 正和

残念ながらまだ日本で使えないけど要注目の機能

河野 貴伸(以下、河野):Shopify Editions Summer ‘23では、100種類を超える機能やアップデートが発表されました。まずは、今回発表されたものの中でこれは日本では使えない、関係ないものから教えていただけますか?

岡村 純一(以下、岡村): まず1つ目は、「Shopify Collective」です。Shopifyのマーチャントは、サプライヤとリテーラーという2つの役割をもつことができ、リテーラーはサプライヤが提供する商品を自分たちのストアで販売することができます。発送や在庫の管理はサプライヤ側が管理するため、リテーラーは在庫を購入する必要がありません。非常にユニークなアプリケーションですが、現在米国限定となっています。

Shopifyサイトより引用

もう1つは、「Shopify Credit」です。こちらは、Shopifyが発行しているクレジットカードになります。こちらも現在米国限定です。

その他、細かい部分で北米先行で使える機能はありますが、主要な部分はいまお話した2つぐらいです。

河野:ありがとうございます。では、日本では、ほぼすべての機能が使えるということですね。

実は今こそShopifyはようやくVer1.0になったばかりなのではないか

河野:その中で、これいいなと思った機能を加藤さんと水野さんに聞きたいと思いますが、いかがですか?

加藤 英也(以下、加藤):そうですね、1番注目されていたのはAIかなと思いますが、開発者・制作者からの目線からすると、エディタがアップデートされたことや、「Shopify Subscriptions」や「Shopify Bundles」など、アプリではなくShopify内でできるようになったことも増えているなと感じました。

これまで、ベータ版としてあった機能が全部公式に出てきて、この状況がShopify  1.0なのではないか、ここがスタートラインだという感じがしましたね。

徳満 泰彰(以下、徳満):いいですね。実は社内では、今回のShopify Editionsのリリース前後で大きな境目ができるという話もあったので、まさに、その通りだと思います。

加藤:まさにここがShopify がやりたいと思っていることなんだろうなという、理想像というか、輪郭がはっきりしたようなものを感じました。

水野 正和(以下、水野):たしかに。私も、Shopifyはコマースがコアコンピタンスですが、それ以上の大きなプラットフォームになっていくのではないかという印象が強く残りました。

徳満:そうですね。裏話ですが、実は今回のShopify Editionsのサイト自体、Shopifyの技術スタックを使っているんです。ランディングページはストアフロントAPIでできていて、ヘッドレスでできています。これだけきれいなサイトもShopifyをベースに作ることができるようになっています。

コマースだけのサイトではなく、ページ自体を作れるプラットフォーム、いわゆるCMSとしてもかなり確立されたものになっています。

岡村:ちょうどEditionsと同時期に我々のエンジニアリングブログが公開されて、そこに「ShopifyはWebプラットフォームになります」と書かれていました。

エディタでいうと、オンラインストア2.0が数年前にできて、そこから開発されて回を重ねるごとに進化しているのですが、どちらかというとここ数年はまだ過渡期でした。Webの割にはすごく高機能なエディタなのですが、デザイナーが実際にデスクトップワークで使う、例えばアドビ社のものにはまだ追いついていませんでした。でも、今は本気でそこに追いつこうとしている感じがします。

マーチャントにとっては、ノーコードでありとあらゆるカスタマイズがエディタ上でできるようになりました。個人的にすごいなと思ったのが、「Flex Sections」という機能で、今までセクションの中で上下のドラッグアンドドロップがメインだったのですが、縦横もできるし、サイズの調整もできるようになりました。その機能があるからこそ、CMSの可能性があるなと思っています。

Shopifyサイトより引用

一方で、それらを支える技術はLiquidなので、今後もデザイナーが作っていく感じになると思いますが、Shopifyが標準で提供している「Dawn」というテーマもどんどんアップデートが進んでいます。

河野:「Dawn」は11.0でしたっけ? かなり更新されますよね(笑)

岡村:やっぱり選択肢として、テーマのコードに編集を加える一歩手前で、エディタを使いこなしてもらい、エディタだけでできることをまずは考えるといったことが、今後制作の現場の意思決定で重要になってくるかと思います。

水野:私がいいなと思ったのは、「Shopify Marketplace Connect」です。理由としては、ウォルマートの事例があります。コロナ禍でアメリカの小売の中で明らかに売上が伸びたのはウォルマートですが*、それは、ShopifyのD2CブランドをMarketplaceでも買えるという構造を作ったからです。

* 参照:『世界の小売業の事例から学ぶOMO大全

これを日本の企業でも実施していくと結構おもしろくなるんじゃないかなと思っています。日本の小売でこの構造を作っていくことの可能性に気づいていない企業は結構多いのではないかなと思いますが、Shopifyと連携すれば簡単にできるのでぜひやってみていただきたいですね。ネットスーパーや百貨店さんのサイトでさまざまなD2Cブランドと組み合わせてやっていくとおもしろいと思います。

今回の目玉のアプリはバンドルとサブスクリプション

河野:今回、いろんな機能がありますが、特に注目していることを聞いてみたいなと思います。加藤さんが先ほど「Shopify Bundles」とおっしゃってましたが、こちらの機能は具体的にはどんな機能でしょうか?

加藤:「Shopify Bundles」は、バンドルの作成や販売が可能になるアプリです。これまでは、Shopifyは商品を単体で販売して、それぞれカートに入れて、チェックアウトするという仕組みだったので、組み合わせてセット商品として販売したいというニーズがあるときに「価格を変えたい」という相談に対して、在庫の連動や出荷が難しい状態でした。

ただ、去年Shopify Functionsという機能がリリースされて、技術的にはバンドルができるようになりました。そこで、Functionsを使ってアプリを作れると思っていたタイミングで、今回、公式のバンドルアプリが出ました。

岡村さんに聞きたいのですが、これはShopifyとして戦略的に出したものなのか、もしくは、「Functionsを使ってこういうことができるよ」というサンプルとして出したものなのかでいうとどちらになるのでしょうか?

岡村:そうですね。Tobi(Shopifyの創業者 兼 CEO)も今回の目玉のアプリとして、BundlesとSubscriptionsを挙げていました。サードパーティーのアプリがたくさんある中で、Shopifyが出すということで気になった方も多いと思います。

Shopifyのアプリは、ベーシックな基本機能で多くの人に使ってもらえる、かゆいところに手が届くようにしているけど、Shopify自体は起業家からエンタープライズ企業まですべてをカバーすることを1番の目標、バリューとしておいています。

そのため、大手になるとベーシックな機能ではだんだん間に合わなくなってしまうのが現実です。それに、1つのユースケースでまかなえるかというとそうでもなくて、マーチャントがどういうチャネルで販売するかやどういう成長曲線を描くかで、必要な機能も変わってきます。そこでサードパーティのアプリや、制作会社が個別のソリューションを同じAPIを使って作ることが必要になってきます。

ただ、そこの段階にいくまでやるべきことはだいたいは同じです。ベーシックな機能で十分まかなえるので、Shopifyのアプリを使っていただいて、もっと機能も必要になるというときは、専門家であるパートナーに頼めばいいと思います。そういう形で共存できるので、今回BundlesやSubscriptionsという公式アプリが出たからといってリプレイスする必要はないですし、Shopify自体のバリューを高めつつ、パートナーと一緒にやっていきたいと思っています。

なので、加藤さんの質問にお答えすると、サンプルという位置づけではないですし、今回Shopifyとして公式アプリを出しましたが、我々の機能で全部まかなおうと思っているわけではないです。

徳満:実際、すでにサードパーティのアプリでバンドルのアプリもリリースされているので、売上が高くて複雑なことをしたいという方たちは、ぜひそちらを利用していただくといいかもしれないですね。

河野:言い換えると、最初に入れるアプリとしてShopifyのアプリを入れるのはいいかもしれないですね。まずはShopifyアプリを入れてみて、もっといろいろやりたいなと思ったときに、サードパーティーのアプリを検討するという、そのステップとしては、Shopifyとしてもおすすめという感じですか?

岡村:そうですね、いいと思います。特にサブスクリプションにおいては、日本は昔から定期購入の文化が根づいているため、日本市場に合わせたものが必要だと思っています。

D2Cストアと一元管理。より使いやすくなったB2B向け機能

河野:もう一つ注目している機能が、B2Bの機能です。もともと、B2Bの機能自体はありました。今回のEditionsでもいろいろな機能が紹介されていて、これはもっと使いこなしたいなというものは何かありますか?

水野:そうですね、D2Cブランドをされている方と話していると、やはりD2Cだけだと頭打ちになってしまい、ある程度になると他の流通チャネルに拡大する必要があるとおっしゃられます。スケールする際にB2B向けの販売は選択肢として出るのですが、在庫をそれぞれのチャネルで考えないといけないし、受注をFAXやメールで受け取る必要があり、対応をするために人員を増やしてコストがかかるという課題があります。

ただ、Shopifyであれば1つの管理画面でD2CもB2Bも両方の管理ができるのでそういった課題を解決でき、さらに非常に使いやすいです。B2Bでよくあるボリュームディスカウントも簡単に設定できます。

河野:すごいですよね。一覧で一括で注文できる、オーダー表のようなもの(Quick order list)もすごく便利ですよね。

Shopifyサイトより引用

岡村:私も手前味噌ですが、本当に憎いなと思ったことがあり…。B2Bの機能として、ボリュームディスカウントや、最小個数と最大個数を表示するといった機能があるのですが、同時にShopifyの公式のテーマの「Dawn」が標準で対応しているのです。コードを入れなくても「Dawn」を使えば、設定すると商品ページにB2Bでログインすると、オーダーリストや条件による金額の変化が表示されるようになります。

かつ、ストアのエディタで、通常のストアやB2B、また国ごとにデザインを変更することができるので、切り替えると各設定のページのデザインになるといったように、すべての新機能が同期されています。

プロダクトをバラバラにするのではなく、うまく同期していることが今回のB2Bではすごくいきているなと感じました。

河野:今回、B2B全体としてすごく連携されているなという印象がありました。すごく実用的で使いたいなと思いますね。

徳満:私もすごく秀逸だなと思ったのが、今米国でB2Bの市場調査すると、やはりZ世代が主流になっているんですが、Z世代の方ってD2Cでお買い物することに慣れているので、D2CのストアとB2Bのストアをあまり変えないでほしいという意見があるそうです。そのほうが購入しやすいようで。

それをうまく実現するような形で、ストアフロントのカスタマイズや、さらにデザインする人たちもあまり大きく変更せず、ちょっとした作業で変更できるのは、おそらくいろんなことがやりやすくなると思っています。

水野:もう、D2Cのサイトさえできていれば、B2Bのサイトはシンプルにすぐにできちゃう感じがしましたね。

岡村:そうですね。先ほどのウォルマートの事例も実施しやすくなります。B2Bをとりあえず作るけど、主流はD2Cでやりたいというマーチャントもいらっしゃると思いますが、Shopifyであればセットで作って、1つのストアで管理できるので、これは結構ゲームチェンジャーになると考えています。

やはり、販路を開拓するのと商品を開発するのは別のスキルだったり、ビジネスだったりするので、オンラインストアを立ち上げたけど受注があまりないマーチャント向けに、新しいB2Bの販路をお届けできれば、と思っています。

河野:ありがとうございます。

Shopifyの開発スキルは、横展開しやすく資産を流用できる

河野:実際に使う側として便利な機能とか使いやすくなる機能とかってかなりわかりやすいなと思ったのですが、少し技術よりの話もしてみたいと思います。今回、チェックアウト周りも結構細かいアップデートがありましたが、それ以外にも管理画面でアプリなどの画面が追加できるといったところとか…、本当に細かいところも聞きたいです。

岡村:これは、「Admin UI extensions」という仕組みです。今までアプリなどで、管理画面に独自のUIを入れる場合は、その他メニューというのがあり、そこをクリックするとアプリの画面にリダイレクトするという形でした。配送アプリとかではよく使われているものですね。ただこの形だと離脱が多く、ちょっとUXがいいとは言えませんでした。

さきほど話にあがったSubscriptionsのアプリだけは、商品詳細の中に「この商品をどういうサイクルでサブスクリプションするか」という画面を埋め込めるようになっていました。これが、「Admin UI extensions」で、いろんなアプリに汎用的に入れられるようになりました。

これも先に述べたShopifyがプロダクト作る際に、いろいろなところに同期できるようにしていることが表れています。チェックアウト周りだと「Checkout Extensibility」の中の、例えば「Checkout UI extensions」でチェックアウトのUIの中にバナーを入れたり、いろんな部品を入れられる機能があります。

この仕組みと「Admin UI extensions」の裏で使われている技術はほぼ同じものです。開発者の方は、「Checkout Extensibility」をマスターすれば同じような開発の仕組みや、場合によってはコードも流用して、「Checkout UI extensions」を作ることができます。

また、Post-purchase(決済後の追加購入)やWeb pixels(購入者のイベント取得)も同じような仕組みです。我々がオープンソースで公開しているようなライブラリを使っているので、プロダクトの仕組みだけではなくて、開発者の方のスキルも横展開できるようになっています。

Shopifyは新しいテクノロジーに投資しているので、最初の部分はとっつきにくいなと感じる部分もあるかもしれないですが、一度、ReactやヘッドレスのRemixなどをマスターすると、それを同じやり方で横展開できて、資産を流用できるようになっているので、これはすごく開発者の方に対してフレンドリーなアプローチだと思います。

加藤:まさに、Remixみたいな部分もそうですし、今まではAPIという形で1つ1つの機能で固まっていましたが、例えばさっき話していたBundlesにもFunctionsという機能が使われていたり、Extentionも横串で同じように使えたりします。

今回、開発者向けの情報として、Extentionを開発側で一元管理できるようになったり、開発側のスタックが整理されてデプロイができるようになったりしています。

河野:すごく開発しやすくなったな、とっつきやすくなったなと思います。これからさらにいろんなことができそうですよね。


まとめ

毎回Shopify Editionsではたくさんの機能が紹介されていますが、今回のSummer ’23が大きな境目になるという徳満さんのお話が非常に印象的でした。

まさにここが「Shopifyのスタートライン」「ShopifyはWebプラットフォームになります」という言葉から、これからもShopifyがどんどん進化を続けていくことが読み取れてワクワクしました。

App Unityでも、今回発表された機能についてをどんどん活用していき、また、これからのShopifyの進化にも期待をしていければと思います。

■ 「Shopify Editions Summer ’23」の詳細はこちらから

寄稿者プロフィール

東口 美睦

株式会社フィードフォース App Unity支援チーム

フィードフォースへ新卒入社し、データフィード管理ツール「dfplus.io」のセールスを担当。その後、App Unity支援チームに参加し、App Unityのマーケティングを担当。YouTubeチャンネルやブログ執筆を行う。