OMO(Online Merges with Offline)は、国内向けのECだけではなく、海外向けの越境ECを実施していく上でも非常に重要な考え方です。
本記事では、越境ECの駆け込み寺でおなじみ、世界へボカン株式会社の徳田氏に越境ECのOMO事例について解説していただいた様子をまとめています。
スピーカー
■徳田祐希 氏 世界へボカン株式会社 代表取締役社長
イギリス留学を経て、2007年海外向けWEBマーケティングを行う会社に入社。
外国人マーケターと共に海外WEBマーケティングチームを牽引する。
海外WEBコンサルティングで、東アフリカ向け中古車販売台数を日本1位に導く。
中古車輸出、製造業、不動産関連のプロジェクトで数多くの実績を残す。
2014年8月世界へボカン株式会社を設立し、代表取締役に就任。
チャンネル登録数7,500人超えの海外WEBマーケティングチャンネルで情報を発信中。
越境ECはオフライン・オンラインで相乗効果を生む
越境EC取り組むうえでは、オフライン・オンラインの両方でアプローチすることが重要です。世界へボカン株式会社では、オフラインでの施策を地上戦、オンラインでの施策を空中戦と呼んでいます。
- 地上戦(オフライン)
- 実店舗に来店したインバウンド客をオフライン(越境EC)に引き上げる
- 空中戦(オンライン)
- Google検索やSNSを通して越境ECへ集客する
なかなか売上が上がらず伸び悩んでいる企業様に共通するのは、空中戦ばかりに注力しがちだということです。
越境ECでは、地上戦と空中戦の行き来、つまりOMOの考え方が非常に重要になります。
ここからは、実際に地上戦と空中戦を活用して相乗効果を生んでいる事例を7つご紹介します。
インバウンド客を一見客にしない、越境ECのOMO事例7選
事例①「UGCを作る施策 〜BASEMENT〜」
1つ目は、スニーカーショップ「BASEMENT」のUGCを活用した事例です。
BASEMENT様では、購入したスニーカーを飾って写真を撮ることができるフォトスポットを店内に設置しています。購入者は写真を撮影後、Instagramを始めとしたSNSに投稿をすることが多いようです。
ユーザーがSNSなどに商品を紹介した投稿は、UGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)と呼ばれて、UGCを活用することがブランドの認知向上に効果的なマーケティング手法として現在注目を集めています。
フォトスポットはそのようなUGCが自然と作りだされる仕組みになっています。
この仕組みによって、インバウンド客が来店した際にSNSで自然と自社商品を広めてもらい、ECを通じて購入していただく機会を増やすことができます。
事例②「Shopify POSを使ったECのクーポン配布 〜AMERICAN EAGLE〜」
2つ目は、アパレルブランド「AMERICAN EAGLE」のショップカードを使った事例です。
AMERICAN EAGLE様は、2022年10月に日本に再上陸し、渋谷と池袋に2店舗オープンしました。
AMERICAN EAGLE様の店舗では、購入後にショップカードを配布しています。ショップカードには、QRコードが記載されていて、読み込むとECサイトで利用できるクーポンコードが表示されます。
インバウンド客が来店して購入した後に、1度の購入で終わるのではなく、クーポン付きのショップカードを渡すことで、再度購入したくなるような仕掛けを作っています。
また、AMERICAN EAGLE様では、Shopify POSを活用し、店舗で購入したお客様の情報をECサイトにも連携しています。そのため、ショップカード自体は全ユーザー共通のものですが、各アカウント(顧客情報)とクーポンを紐付けて、1回しか購入できないようにしています。
OMO施策の代表例である、POSのデータをECサイトに紐付けているからこそできる施策です。
事例③「YouTube/ブログでのコンテンツ配信」
3つ目は、YouTubeやブログを活用したコンテンツ配信です。今回は、京都のお土産物屋さんで実施されている例をご紹介します。
こちらの店舗様は、コロナ禍で来店者が減少したため、越境ECに注力をするタイミングで、YouTubeやブログなどのコンテンツ作成を開始しました。
特にYouTubeでの情報発信に力を入れていて、
- 店舗のショップツアー
- 各商品の詳細説明
を動画にして公開しています。
これだけではオンラインの施策に感じますが、実はこれらの施策が店舗への来店客増加に大きく貢献していたのです。2022年の夏ごろからインバウンド客の回復で来店者数が増えた結果、YouTubeやブログで先に店舗を知っていた方の来店が多くなっているという効果がありました。
このようにオンラインからオフラインへ引き上げるコンテンツを作成するためには、旅行で訪問する先の予定やほしい商品を探している方に向けた発信をすることがコツとなります。特に、お土産物屋さんでは、着物・刀・お箸・組子細工などは人気のキーワードですが、商品自体を紹介をする店舗はまだ少ないので、インバウンド客に見られやすいコンテンツになります。
また、ブログなどのコンテンツは接客ツールとしても活用できます。
例えば、店頭で商品を選ぶ際に、その商品に関連するオンラインのコンテンツに遷移するQRコードを読み込んでいただく仕組みを作ります。するとお客様は、実際に商品を手にとりながら、商品の詳細を知ることができ、購入を促すことが可能となります。
オンラインのコンテンツとオフラインの接点をもたせることで、接客にも活用することでも効果的です。
事例④「店舗とECの会員情報を連携/ポイントの一元化 〜Omni Hub〜」
4つ目は、Shopifyとスマレジの会員情報を連携する「Omni Hub」というサービスです。
越境ECでは、Omni Hubはポップアップストアでよく活用されています。
実店舗お持ちでない企業さまは購買のデータをEC上に顧客情報として残して、インバウンド客を一見客にしないような仕組みを作ることが非常に重要です。
スマレジとShopify、Omni Hubを使えば、ポップアップストアで購入いただいたお客様の情報をShopify上に記録することができます。ポイントの一元化機能もあり、店舗で購入した際に付与されたポイントをECで使うことができるので、オフラインからオンラインへ引き上げる仕組みを作ることも可能です。
また、国内だけではなく、海外で展示会を行う際にもShopify・スマレジ・Omni Hubを活用することができます。
事例⑤「 スマホで海外発送用の伝票を作成〜ハコボウヤ〜」
5つ目は、配送用の伝票が作れる「ハコボウヤ」というサービスです。
ハコボウヤは、QRコードを読み込んで住所や個人情報を登録すると送り状が自動で印刷されるサービスです。
このサービスを活用することで、
- 手書きの文字が読めなくて届けることができないというトラブルをなくす
- 個人情報を取得することでオンライン上で新たに接客をしてリピートを促進する
ことができます。
また、飛行機の重量制限を気にして商品を購入することができないということも防げ、客単価の引き上げにも効果的です。
事例⑥「宿泊施設で商品を展示 〜Experience Spot〜」
6つ目は、宿泊施設を活用した取り組み「Experience Spot」です。
この取り組みは、包丁や着物やお茶など、実際に見たり触ったりしないと価値が伝わりにくい商品を、試供品として宿泊施設に置いておき、宿泊者は気に入った商品があればQRコードを読み込んでECサイトで購入することができるものです。
QRコードにはアフィリエイトリンクが載っていて、購買が発生したら宿泊施設にキックバックすることで、宿泊施設にも取り組みに参加するメリットを作っています。
この事例は、オフラインで実際に体験していただき、オンラインに来ていただくための取り組みです。
事例⑦「ECにストアリストを作り実店舗に誘導する」
7つ目は、ECサイトにストアリストを作ることです。
ECで検討した商品はを実際に手にとってみてから買いたいお客様も多いですが、どこでその商品が買えるのかがEC上に書かれていないこともあります。
ECに店舗を記載しない理由としては、店舗で買うとECの評価にならなかったり、メーカーであれば卸先の売上になってしまったりするからです。
ですが、実店舗の売上が上がれば、全体としての売上はあがります。そのため、ECと店舗の売上をわけないで店舗の紹介をすることが非常に重要です。これによって、オンラインからオフラインへ引き上げることができます。
ストア側もECサイトで紹介されると嬉しいので、QRコードを店舗におくなどオンラインに引き上げる施策に協力してくれることもあり、メリットも大きいので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、世界へボカンの徳田氏に、越境ECで取り組まれているOMO事例について紹介いただきました。
越境ECにおいても、オンラインだけではなくオフラインでの施策を行うことが重要です。しかし、簡単にやれるわけではありません。
買いやすい仕組みを作って、ユーザーが商品を購入し感動しシェアしてくれるようなユーザー体験を作ることを目指しましょう。
今回ご紹介した施策もごく一部にすぎません。もしも、お困りのことや実現されたいことがございましたら、世界へボカン株式会社にご相談ください!

寄稿者プロフィール
東口 美睦
株式会社フィードフォース App Unity支援チーム
フィードフォースへ新卒入社し、データフィード管理ツール「dfplus.io」のセールスを担当。その後、App Unity支援チームに参加し、Shopifyストアの集客やCRM運用の支援サービス・App UnityのYouTubeチャンネル開設に携わる。