1つのIDとパスワードを利用して、複数のサイトを横断して利用できるシングルサインオンを実現することは、ユーザーにとっても、企業にとってもメリットのある施策です。
その中でもShopifyを利用してシングルサインオンを実現する場合、そもそも実装できるのか、どういったユースケースがあるのか、ユースケースごとでどのような実装方法があるのかを把握しておきたいといった方も多いのではないでしょうか?
本記事では、「Shopifyストアへシングルサインオンを実現することは可能か?」「シングルサインオンのユースケース」「ユースケース別の実装方法」についてまとめています。Shopify構築を検討されている方、もしくは運営中の方はぜひ参考にしてください。
本記事では、シングルサインオンを「1つのIDとパスワードを利用して複数のサイトを横断して利用できる」という広義の意味で記載しているため、ソーシャルログインをシングルサインオンの一つとして紹介しております。
シングルサインオンとは
シングルサインオンとは、1つのIDとパスワードで複数のオンラインサービスにログインする仕組みのことです。
LINEアカウントでログインするソーシャルログインや、企業独自に提供しているブランドの共通IDを利用してログインするような仕組みもシングルサインオンの仕組みです。
Shopifyでシングルサインオンを実現するには
Shopifyでシングルサインオンを実現するためには、Shopifyから提供されているプランの中でもShopify Plusプランのみ利用可能なMultipass API(マルチパス API)*の利用が必要となります。(2023年8月現在)
* Multipass APIとは 「Multipass」とは、Shopifyストアを含む複数のサイトを運営している企業向けの機能です。この機能を利用すると、ユーザーがShopifyストア以外の別サイトで既にアカウントを保有している場合、そのアカウントに登録されているメールアドレスを通じてShopifyストアへリダイレクトし、ログインすることができます。
Multipass APIを利用することで外部のシングルサインオン基盤と連携できる認証の仕組みが利用できるようになりますが、Shopifyにはシングルサインオン基盤は提供されていないため別途用意する必要があります。
シングルサインオン基盤は、以下でご紹介させていただく3つのユースケースに応じて用意する必要がありますが、Shopify Plus専用のアプリを利用することで簡単にシングルサインオンを実装することが可能です。
シングルサインオンのユースケース
ShopifyのMultipass APIを利用してシングルサインオンを実装するユースケースとしては、以下3パターンあります。
- ブランド共通IDを利用したシングルサインオン
- SNSアカウントを利用したシングルサインオン
- Shopifyアカウントを利用したシングルサインオン
①ブランド共通IDを利用したシングルサインオン
1つ目は、ブランド共通IDを利用したシングルサインオンです。
ブランド共通IDとは、メーカーや小売などの企業が独自に提供している企業が運営している複数サイトに共通でログインできるIDのことです。例えば、味の素株式会社が提供する「AJINOMOTO ID」や、花王株式会社が提供する「My Kao ID」などが該当します。
ブランドIDを利用したシングルサインオンを実装することで、ユーザーは1つのIDとパスワードで、企業が運営しているShopifyのサイトでもログインすることが可能となります。
既にAuth0のような共通ID基盤を利用してブランド共通IDを提供している企業からすると、ユーザーにShopifyサイトのみIDとパスワードを別に発行いただくことは、ユーザー体験の毀損に繋がってしまいます。そのため、シングルサインオンを実装することは顧客体験を向上させることに繋がります。
加えて、クッキー規制によりファーストパーティデータの重要性が高まっていますが、統合された顧客情報の広告活用だけでなく、CRM施策や商品開発への活用、小売企業にとってはリテールメディアへの活用をしていくために、顧客情報の統合が重要となります。
ブランド共通IDの代表的な提供事例については、以下記事にてご紹介していますので、併せてご参考ください。
参考:「ブランド共通IDの提供事例を把握!企業独自で提供している代表的なブランド共通IDとは?」
②SNSアカウントを用いたシングルサインオン
2つ目は、SNSアカウントを用いたシングルサインオンです。このケースでは、LINEやGoogleなどユーザーが既に保有しているSNSや外部サービスのアカウント情報を利用して、Shopifyストアにソーシャルログインを実現します。
ユーザーは手軽に利用できるオンラインサービスを選ぶ傾向が高いため、ユーザーが使い慣れているSNSのアカウント情報を利用したシングルサインオンが実現することで利用率向上が期待できます。
ソーシャルログインを実現する際の、代表的なSNSや外部サービスは以下となります。
◆ ソーシャルログインを実現する際の代表的なSNS・外部サービス
③Shopifyアカウントを利用したシングルサインオン
3つ目は、Shopifyアカウントを利用したシングルサインオンです。このケースでは、ユーザーが保有しているShopifyアカウントを利用して、他のShopifyサイトへログインすることを実現します。
「ブランドごとの世界観を打ち出していきたい」、「組織間の調整に時間がかかるためドメインの異なるShopifyストアを開設したい」などの理由で、ドメインの異なる複数のShopifyサイトを運営している企業も多いかと思います。
しかし、上記のような場合は、ユーザーにストアごとでIDとパスワードを発行いただく必要があるため、ユーザーがサイトを横断して利用いただく際に、アカウント発行の手間が発生してしまいます。Shopifyストアが多くなるほどかかる工数も多くなり、サイト間でのスムーズな利用を阻害する要因になります。
そこで、Shopifyアカウント情報を利用して、1つのIDとパスワードで複数のShopifyサイトにログインできるシングルサインオンが活用されます。
App Unityが提供するユースケース別のシングルサインオン実装方法
上述の通り、シングルサインオンを実装するにはShopify Plusプランの利用に加えて、外部のシングルサインオン基盤が必要となります。
弊社ではユースケースごとにシングルサインオンを実装できるShopify Plus専用のアプリを提供しており、以下でご紹介いたします。
①ブランド共通IDを利用したシングルサインオンを実現する「App Unity Xross ID」
「App Unity Xross ID」は、企業独自に提供しているブランド共通IDを利用したシングルサインオンをShopifyサイトで簡単に実現する、Shopify Plus専用のアプリです。
各企業ごとの要望に応じて機能をカスタマイズすることが可能なカスタムアプリとして提供しており、シングルサインオンだけでなく「顧客基盤とのデータ同期」「同期するデータ項目の追加」「SNSのログイン判別」「マイページでの退会」といった機能追加やカスタマイズが可能です。
ブランド共通IDを提供している企業の場合、既にAuth0のような共通ID基盤を保有しています。「App Unity Xross ID」は共通ID基盤が発行するログインIDとマルチパスで繋ぐ役割となり、SAML・OAuth・Open ID Connectといった認証プロトコルに対応しています。

②SNSアカウントを利用したシングルサインオンを実現する「CRM PLUS on LINE」
CRM PLUS on LINEは、Shopifyの顧客IDとLINEのIDを連携し、LINE公式アカウントだけでは実現が難しい細かなコミュニケーションを実現するShopifyアプリです。
CRM PLUS on LINEでは、7つのプランが提供されていますが、その中のAdvancedプラン(Shopify Plus専用)を利用することで、LINEログインなどのソーシャルログインを実現することができます。その他にも、「LINEログインで自動友だち追加・ID連携促進」「LINEミニアプリ会員証(店舗・EC共通の会員バーコード発行)」といった機能が利用できます。
◆ Shopifyアプリ「CRM PLUS on LINE」の詳細を見る
③Shopifyアカウントを利用したシングルサインオンを実現する「App Unity IDP」
Shopifyアカウントを利用したシングルサインオンを実現する場合、上述のApp Unity Xross IDを利用することで実現可能です。
また顧客情報は指定のShopifyサイトに統合されますが、Shopifyで発行したアカウント情報を共通のログインIDとして管理して、シングルサインオン基盤と連携しユーザー認証を行うIDP(IDプロバイダー)が必要となります。
シングルサインオン基盤と連携しユーザー認証を行うShopify Plus専用のアプリ「App Unity IDP」のリリースを予定しており、App Unity Xross IDとApp Unity IDPを組み合わせることで実現可能となる予定です。
まとめ
Shopifyストアでのシングルサインオンの実現可否や、シングルサインオンのユースケース、ユースケース別の実装方法について紹介させていただきました。
シングルサインオンを実現するためにはShopify Plusプランのみ提供されているMultipass APIの利用に加えて外部のシングルサインオン基盤の利用が必要となりますが、Shopify Plus専用アプリなどを利用することでシングルサインオンを簡単に実装することが可能です。
弊社では、ユースケーズごとにシングルサインオンを実現するだけではなく「IDの共通化・活用」領域でお手伝いできることを増やしていこうと考えおります。「ブランド共通IDの提供」「サイト間のポイント共通化」などID統合・シングルサインオン周りでの課題がございましたら、ぜひ一度お話をお聞かせいただき、実現について一緒に考えさせてください。
IDソリューションについての弊社の方向性については、以下記事にてご紹介させていただいておりますので、こちらも併せてご参考にしてください。
参照:「App Unity Xross ID」リリースの背景と今後目指していくもの
寄稿者プロフィール
北林 択哉
株式会社フィードフォース App Unity支援チーム
株式会社フィードフォースへ中途入社後、コンサルティング型広告運用サービス「Feedmatic」でのセールスを経て、「SmartNews」のローカルクーポンのセールスを担当。2021年よりDX支援事業にてShopify定期購買アプリの営業&カスタマーサポートの立ち上げを行いつつ、現在はApp UnityにてShopifyの導入支援を担当しています。