寄稿者:八百俊哉
ShopifyQL Notebooksの概要がわかる【前編】はこちら
ECを運営している中で、自社と類似する競合企業の指標が気になったことはありませんか?
変化の激しいEC業界では、自社の指標だけを追っていては時流において行かれてしまって、気がついた頃には手遅れになっている可能性もあります。そのようなことを発生させないために、自社の実績とベンチマークしている他社の実績を比較することで、適切な意思決定を迅速に行っていく必要があります。
ただ一方で、他社ECの実績を確認することはほぼ不可能に近いため、簡単にベンチマークを設定することはできませんでした。
今回ShopifyQLに新たに追加されたベンチマーク機能を活用することで、他者と自社の実績を比較できるようになりました。そこで、今回はShopifyQL Notebooksを用いてベンチマークの値を確認する方法をご紹介しようと思います。
ShopifyQLとShopifyQL Notebooksとは
ShopifyQLとは、クエリ言語を用いてストアからデータを抽出することを言います。
また、このShopifyQLをより使いやすく分析に適した形でリリースされたのがShopifyQL Notebooksになります。
ShopifyQL Notebooksとは2022年11月にリリースされたShopifyが提供するデータ探索アプリです。(現在はShopify Plusのみ利用可能)
ShopifyQL Notebooksは、ShopifyQLという独自クエリでデータの抽出から可視化までを一気通貫で実施可能で、ShopifyQLを記述する際も予測変換が出力されるので、迷うことなくクエリを記述することができます。また、事前にテンプレートも多く用意されているので、スムーズに分析方法を学べる点も魅力的です。
ベンチマークデータセットという新たなデータの参照元
今回のアップデート以前までは、ShopifyQLからはOrders datasetとProducts datasetの2つのデータセットにアクセスしてデータを取得することが可能でした。そこに今回のアップデートでBenchmark datasetが追加されたという形になります。
それぞれのデータセットの概要を確認してみます。
データセット名 | 概要 |
Orders dataset | 注文ごとのデータが確認できる |
Products dataset | 商品ごとのデータが確認できる |
Benchmark dataset | 類似マーチャント群の注文単価とCVRが確認できる |
Order datasetでは、注文ごとの売り上げや送料・割引額などを集約して確認することができます。Products datasetでは、商品ごとの閲覧数やカート数・購入数などが確認できます。
新たに追加されたBenchmark datasetでは競合の注文単価とCVRの集約した値が確認できます。ここで確認できる数値は、ある1社の数値が表示されているのではなく、複数企業の実績を集約したものが表示されます。競合とは、Shopifyが定義しており過去 30 日間に販売した商品、主な市場の国、注文量など、さまざまな要因に基づいてショップの類似性を定義しています。
ここでBenchmark datasetで確認できる数値の詳細を確認していきます。
名前 | タイプ | 概要 |
aov | 価格 | ショップの平均注文単価 |
aov_benchmark_p25 | 価格 | 類似企業の最小値から数えて25%に位置する平均注文単価 |
aov_benchmark_p50 | 価格 | 類似企業の最小値から数えて50%に位置する平均注文単価 |
aov_benchmark_p75 | 価格 | 類似企業の最小値から数えて75%に位置する平均注文単価 |
aov_rank | パーセント | 類似ショップと比較した平均注文単価のランク |
conversion | パーセント | ショップのコンバージョン率 |
conversion_benchmark_p25 | パーセント | 類似企業の最小値から数えて25%に位置するコンバージョン率 |
converison_benchmark_p50 | パーセント | 類似企業の最小値から数えて50%に位置するコンバージョン率 |
converison_benchmark_p75 | パーセント | 類似企業の最小値から数えて75%に位置するコンバージョン率 |
converison_rank | パーセント | 類似ショップと比較したコンバージョン率のランク |
実際にベンチマークを確認してみる
まずは、月毎にaovのベンチマークと自社のaovを比較するグラフの出力の仕方を紹介します。
FROM benchmarks
VISUALIZE
aov,
aov_benchmark_p25,
aov_benchmark_p50,
aov_benchmark_p75
TYPE LINE
GROUP BY month
LIMIT 30
benchmarksのデータセットから4つの変数を取り出し、それらを月毎に集約するようにしています。
実際の数値は表示できませんが、ShopifyQL Notebooks上ではこちらのように出力されます。
また、こちらのクエリを用いることで、昨年のコンバージョンランクと今年のコンバージョンランクを比較することができます。
FROM benchmarks
VISUALIZE aov_rank
TYPE BAR
GROUP BY year ALL
DURING this_year
COMPARE TO last_year
LIMIT 1
まとめ
今回新たにShopifyQLに加えられたベンチマークデータセットを用いることで、自社と類似するマーチャント群を比較できるようになりました。しかも無料で使用することが出来ます。
これまでShopifyQLで取得できていた値に加えて、他マーチャントと実績を比較をすることでより自社の強みや弱みが発見しやすくなったと思います。
ぜひShopifyQL Notebooksを用いて、EC成長のための分析にお役立てください。
寄稿者プロフィール
八百 俊哉
株式会社フィードフォース App Unityチーム
フィードフォースへ新卒入社し、データ分析チームでデータサイエンティストを担当。その後、App Unityチームに参加し、Shopifyストアのデータ分析サービス開発・新規事業開発に携わる。