寄稿者:フィードフォースベトナム 森大輔

フィードフォースベトナムの森です。2021年11月にフィードフォースグループの子会社をベトナム・ホーチミン市に設立し、越境EC支援とアプリ開発を行っています。
越境ECの最初のステップは、国・地域の選定
最近話題になっている、越境EC。「うちの商品はどの国で売れるのかな?」と気になるマーチャントさんも、手の付け所が分かりにくいと思います。越境ECの最初のステップは「市場調査」です。自社商品をターゲットする適切な国・地域を見定めましょう。

国・地域を選ぶ4つのステップ

ステップ1:自社サイトを見てみよう
Shopifyをご利用の場合は、Shopifyのストア分析機能でロケーション別のデータを詳しく見ることができます。
以下のスクリーンショットの通り、「ストア分析 > レポート > ロケーション別のセッション」から、国別のセッションを確認できます。この機能を使って、自社サイトに特にどの国の人が訪れているかをチェックしましょう。

この分析では以下の項目が特に参考になります。
- 国/地域
- 市区町村
- ランディングページURL
- 訪問者数
- セッション数
- 平均セッション時間
- 直帰率
- カートに追加済み
「ランディングページURL」を見ることで、ユーザーのより具体的な行動を理解できます。
「平均セッション時間」「直帰率」は、セッションの質を判断する上で役立ちます。
「カートに追加済み」をチェックすることで、海外からの購入があまりない場合も、どの国のユーザーがより深く興味を持ったかを判断できます。
自社サイトにGoogleアナリティクスを導入している場合は、Googleアナリティクスでもユーザーの国を確認できます。
Googleアナリティクス4をご利用の場合、「レポート > ユーザー > ユーザー属性 > ユーザー属性サマリー > 国を表示」から、国別のユーザー数で「ボリューム」を、国別のユーザーごとのエンゲージメント率で「質」をチェックしましょう。

さらに、「ユーザー属性の詳細」を「国」ではなく「言語」にすることで、ユーザーが使う言語を多い順に見ることができます。これはかなり重要なポイントで、言語はサイト構築やマーケティング施策の軸になります。例えば、英語サイトを用意すれば、アメリカ・イギリス・オーストラリア・シンガポールなど、特に英語圏の国々をターゲットしやすくなります。
自社サイトにほとんど海外からのアクセスがない場合も、マーケットファインダーを利用できます。マーケットファインダーはGoogleが提供する海外市場調査ツールです。自社のURLとカテゴリーを指定することによって、海外ビジネスを行う国のレコメンドとともに、以下指標など、各国の幅広い参考指標を一覧で見ることができます。
- カテゴリの月間検索ボリューム
- Google広告の競合状況
- 家計可処分所得(USD)
- ビジネスの容易性指数(ランク)

ステップ2:その国には購買力がある?
ターゲットする国の候補が出てきましたね。次にその国や他の販売したい国で、ユーザーに購買力があるかを見ていきましょう。
各国のEC市場規模はStatistaなどで確認できます。マクロ指標として、日本や他国との比較で必ずチェックするようにしましょう。
他に注目する指標は「人口」と「PPP(= Purchasing Power Parity = 購買力平価)」です。当然「GDP」も参考になりますが、「GDP」は国の総生産なので、この指標のみで判断をすると、「人口」がそこまで多くないものの「PPP」が高い国(例:シンガポールなど)を見過ごしてしまう恐れがあります。「人口」と「PPP(= Purchasing Power Parity = 購買力平価)」の各国の詳しいデータは、World Population ReviewとTHE WORLD BANKからご確認ください。
ステップ3:その国でその商品はどれくらい一般的?
GoogleのAPIをソースにした検索SEOツールUbersuggestなどを使用して、該当国でのその商品に関連するキーワードの検索ボリュームを調べましょう(他にキーワードプランナーなどの公式ツールもあります)。例えば以下は、各国での各言語の抹茶(= matcha)と緑茶(= green tea)の月間検索ボリュームを調べた結果です。
英語 | ベトナム語 | タイ語 | インドネシア語 |
matcha | matcha | matcha | matcha |
green tea | trà xanh | ชาเขียว | teh hijau |
単語 | アメリカ(英語) | シンガポール(英語) | マレーシア(英語) | フィリピン(英語) | ベトナム(ベトナム語) | タイ(タイ語) | インドネシア(インドネシア語) |
抹茶(matcha) | 201,000 | 4,400 | 8,100 | 18,100 | 9,900 | 5,400 | 40,500 |
緑茶(green tea/trà xanh/ชาเขียว/teh hijau) | 110,000 | 3,600 | 14,800 | 14,800 | 22,200 | 40,500 | 33,100 |
この結果を見ると、アメリカ・シンガポール・フィリピン・インドネシアでは抹茶が緑茶よりも多く検索されていること、マレーシア・ベトナム・タイではその逆であることが分かります。このように、国によって人気の商品カテゴリーは異なります。おおよその検索ボリュームが分かれば、次に、その単語がどういった単語とセットで検索されているかも見るとよいでしょう。また、検索ボリュームが多い場合は、その国で既に認知が取れている商品カテゴリーと考えられるため、自社サイトの越境ECのみではなく、現地ECモールの活用も検討できます。
該当の国での商品検索ボリュームを確認できたら、次にGoogleトレンドを見てみましょう。Googleトレンドでは検索の絶対数は分かりませんが、検索ボリュームが過去の一定期間でどれくらい増減してきたかのトレンドを確認できます。以下のグラフを見ると、アメリカにおいて「matcha」の注目度が上昇傾向であることがわかります。

ステップ4:競合の出品状況を見てみよう
ターゲット先の国・地域で人気のECモールで、競合の出品状況を確認することも役に立ちます。あくまで一例ですが、アメリカにおいていくつかのキーワードのある日の検索ボリュームと、Amazon USでの検索結果数を比較すると以下の表の通りでした。
英語 | Ubersuggestの検索ボリューム | Amazon USでの検索結果数 |
earring | 246,000 | over 10,000 |
accessories | 201,000 | over 100,000 |
matcha | 201,000 | 350 |
bento box | 201,000 | over 1,000 |
Shiseido | 90,500 | 756 |
handkerchiefs | 60,500 | over 10,000 |
cosplay costume | 60,500 | over 20,000 |
action figure | 60,500 | over 1,000 |
judo | 60,500 | over 10,000 |
fishing reel | 33,100 | over 1,000 |
fishing lure | 33,100 | over 60,000 |
Japanese knife | 27,100 | 641 |
Japanese T-shirts | 6,600 | over 4,000 |
Google検索はAmazon検索と違い、購入目的以外の検索も多いため一概には言えないですが、Google検索ボリュームが多く、かつ、Amazonでの出品数が少ないキーワードにはチャンスがある可能性があります(最終的に売れるかは「価格」など他の多くの変数も絡むため、追加で分析が必要です)。
また、競合商品のECモールでのレビューを見ることも重要です。自社商品と同じカテゴリーの商品のレビュー数が多ければ、需要が強い商品である可能性が高いです。
販売先ターゲット国・地域を選定したら、JETROなどで税制や、実際にその国への販売が可能そうかを調べましょう。
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寄稿者プロフィール
森 大輔
フィードフォースベトナム 代表
フィードフォースで広告運用コンサルタントを経験した後、2021年11月にフィードフォースベトナムを設立し、越境EC支援・アプリ開発事業を行う。好きなベトナム料理はバインセオ。