寄稿者:東口美睦

近年、「OMO」という言葉をよく耳にするようになったのではないでしょうか?

オンラインでの購入がもはや一般化した近年では、オフラインとオンラインの垣根を超えて、ユーザーが本当に便利だと思う購買体験を提供することが求められます。

そのような流れの中ででてきた言葉がOMOです。この記事では、OMOの定義や、O2Oの違いをわかりやすく解説します。

スピーカー

■水野正和 App Unityコンシェルジュ(株式会社フィードフォース)
19歳からフリーのジャーナリストとして活動開始。
イオン株式会社にオンライン構想を提案し2006年に入社、イオンネットスーパーを創業。店内オペレーション、温度帯管理基準、物流などの仕組みを担当。累計100世帯ほどのご家庭にて冷蔵庫内部を調査し、ユーザーインサイトを紐解くことが得意。
2012年にイオンを退社して以降、クラシルなど数々の事業会社でBizDevを担当。「全国の企業のデジタル領域をエンパワーメントしたい」という志を持ってApp Unityに参画。

■みっちー(東口美睦) App Unityチーム (株式会社フィードフォース)
新卒からECサイトの事業者様と関わり、事業者様を多方面でご支援をしたいと志す。
現在水野のもとで、ShopifyやOMOを猛勉強中。

OMOとは?


水野:今日はOMOについてわかりやすく解説します!早速ですが、みっちーはOMOって何か知っていますか?

みっちー:OMOですか…。最近よく耳にするワードですが、正直よくわかっていません。

水野:ピンとこないですよね。OMOは「Online Merges with Offline」の略称で、日本語に直訳すると「オンラインとオフラインの統合」です。より具体的にいうと、オンラインとオフラインの垣根を超えて、ユーザーが商品を購入しやすい環境を作ることです。

みっちー:なるほど。

水野:ちなみに、前からある言葉でO2Oというのがありますよね。

みっちー:「Online to Offline」ですよね、直訳すると「オンラインからオフライン」で、OMOと同じような感じがします。

水野:実は、O2OとOMOは全くちがった言葉なんです!

最初にOMOを提唱したのは、Google Chinaを統括していたカイフ・リー氏ですが、リー氏は、OMOを「ピュアなECから、O2Oに変わった世界をさらに進化させた次のステップ」と定義しました。

みっちー:「O2Oから変わった世界を進化」ですか。

水野:はい、まさに進化という言葉が非常に重要です。

つまり、今までの「O2O(Online to Offline)」の考え方の延長線上にあるのではなく、一線を画した状態、イノベーション的な考え方と言えます。

OMOとO2Oの違い


水野:では、具体的にはOMOとO2Oは何が違うのかというお話ですが、大きな違いは「誰目線で考えられた施策なのか」という部分です。

みっちー:目線ですか。

水野:今まで実施されていたO2Oは、企業目線の考え方です。O2Oは、企業目線でお客様をオンラインからオフラインへ送客するために情報を送りつける、いわばプロモーションの一種です。

みっちー:なるほど。例えば、LNEなどのSNSでクーポンを送り店舗への来店を促すなどですか?

水野:まさにそうです!その他には、メールマガジンやSMS、アプリでのプッシュなども含まれますね。お客様にとっては有益な情報である場合もあるかもしれませんが、それが本当に有益であることは実体験として少ないと思います。

対してOMOは、お客様目線の考え方です。OMOは、オフラインとオンラインの垣根を超えて、お客様が何か行動をするその瞬間に、一番便利だなと思う方法を選べる状態にすることです。

そのため、ユーザーは店舗で買うことがゴールではなく、例えば店舗で得た情報を使ってECサイトで商品を買うこともあったり、SNSで情報を収集をしてそのままECサイトで購入することもあったりと、多様な購入経路が生まれます。

みっちー:なるほど。オフライン・オンライン概念どうこうではなく、お客様の目線に立ってこれはいい体験なのかであったり、便利なのかっていうそういった総称した考え方なんですね。

水野:OMOでは、カスタマージャーニーを考えた上で、お客様にとって便利なのか?嬉しい情報を届けられているのか?を判断することが非常に重要となります。これは、「UX(User Experince)」という言葉と近い概念でもあります。

OMOの施策例


みっちー:でも、実際何をするとOMOと言えるのでしょうか?まだあまりイメージがつかないです。

水野:身近な事例でいうと「Uber eats」。これまでネットスーパーなどの配達は、自分の注文した荷物がいつ届くのか分からず、選択した時間帯は「子どものお風呂も入れられない」、「トイレも安心して行けない」というお声をよく聞きました。

ですが、Uber eatsの場合、配達員が持つデバイスを通して、ステータスや移動している場所が一目瞭然になりましたよね。あれは本当にイノベーションだし、他のサービスも真似をしていました。

みっちー:たしかに、だいたいの時間だけ指定されて、その時間ずっと待っていないといけないってすごくストレスですよね。

水野:他にも日本には未上陸ですが、無人コンビニと呼ばれる「Amazon Go」。あれはユーザーはレジに並ばずに会計ができてしまいます。お客様はAmazonアプリをかざして店内に入り、持ち出したものは自動的に会計が行われるので、欲しい商品をそのまま店外に持ち出すことができますよね。そのためこれまでのコンビニよりもUXを高めることができます。

みっちー:Amazonの会員データと店舗のデータを連携させているんですね。レジに並ばなくてもいいなんて、かなりイノベーションですね!

水野:ただ、ここで忘れてはいけないポイントは、OMOはお客様にとって便利な方法を選べるための施策という点です。例えば、店舗とECストアの会員データを統合したとしても、購入導線を整えず、そのデータを使ってただ企業にとって都合の良い情報を送りつけるだけでは、OMOとはいえません。

みっちー:購入するまで一貫して便利だと思える状態を作れているかが非常に重要なんですね。

水野:日本においては、このようにデータを活用して有益な情報を届ける部分がまだまだ不足している企業が多いです。このデータ活用をうまく実施しているのが、中国です。中国の企業はお客様の属性情報や利用履歴など、さまざまな情報を貯めていて、それをお客様に有益な情報にして、差し上げるということを徹底しています。

OMOの成功事例1 – 中国のスーパー、盒马(フーマー)のデータ活用例


水野:ところで、盒马(フーマー)という中国のスーパーをご存知でしょうか?

みっちー:初めて聞きました。

水野:盒马(フーマー)では、デジタル技術やデータを用いて購入までの様々な工程が効率化されています。

みっちー:なんだか、未来のスーパーといった感じですね。

水野:はい、実際に未来型スーパーとも呼ばれています。

盒马(フーマー)でよく注目されているのは、生鮮の販売方法です。ユーザーはスマートフォンのアプリからほしい商品を注文すると、それがすぐに店舗スタッフに通知されます。そして、注文があった商品を天井に設置しているベルトコンベヤーに載せて配送し、その結果、ユーザーは注文後30分ほどで商品を受け取ることができます。

みっちー:30分!早いですね!

水野:しかも、店内では、イセエビなど鮮魚が泳ぐ生け簀もあり、非常に新鮮な食材を1秒でも早く配送することが徹底されています。

しかし、生鮮の販売方法以上に注目すべきポイントはデータの活用です。盒马(フーマー)では、商品のQRコードを読み込むと、産地の情報やオススメの食べごろに加え、商品を活用したレシピも表示されます。

みっちー:それなら、日本でもすぐに商品とレシピの情報を紐付けて実施できそうですね。

水野:そうなんですが、実は盒马(フーマー)では、レシピを表示するだけではなく、そのレシピを作るために追加で必要な食品が店頭にない場合は、レシピが作れないと表示されます。

例えば、アボカドを検索した場合、アボカドを使ったレシピが出てきます。その1つに「アボカドと生ハムのサラダ」のレシピがありますが、もしも生ハムの在庫が切れている場合は、レシピが作れないことをユーザーに知らせてくれます。

みっちー:それはすごいです!各商品のデータもリアルタイムで連携されているんですね。

水野:はい、このように、とにかくお客様ががっかりすることはすべて排除されています。

OMOの成功事例2 – 日本で人気のモバイルペイメントPayPayの活用例


水野:日本でもOMOが成功している事例はあります。みっちーはモバイルペイメントを使っていますか?

みっちー:はい、PayPayを使っています!コンビニやスーパーなど、支払いは基本PayPayです。

水野:今や、モバイルペイメントは日常に溶け込むほど身近な存在ですよね。どうしてPayPayを使っているのですか?

みっちー:とにかく便利だからです。わざわざATMに行って現金を取り出さなくても支払いできますし、すごく楽です。

水野:そうですよね。あと、自動車税や光熱費も自宅で請求書払いができることは大変魅力的です。今までコンビニにわざわざ足を運んで支払いをしないといけなかった状況から、自宅でスマートフォンを操作するだけで支払いができるようになりました。これは、ユーザーが非常に便利だと思う方法を選べる状態という点で、OMOの好事例といえそうです。

EC化率からみるOMOの今後


水野:実は、中国ではEC化率を伸ばすために戦略的にOMOが発展したと言われています。その戦略とは、先述した盒马(フーマー)というスーパーと、もうひとつAlipayというモバイルペイメントです。

みっちー:戦略ですか?

水野:そうです。中国のEC化率は、2019年時点で20%手前でした。世界では、20%を超えている国はなく、先駆者になるために残りの80%を取りに行くという戦略のもと始まった取り組みです。

日本では、毎年経済産業省がEC化率を発表しています。全世界のEC化率は、2021年時点で19.6%に対し、日本は8.7%です。食品に絞ると3.77%ほどしかありません。

ECが発達している中国に比べると、まだ11%ほども差がありますが、逆に言うと、11%伸びしろがあるということです。

※経済産業省「令和3年電子商取引に関する市場調査」から著者作成

水野:また、ECは近年成長している分野で、毎年3000億円ほどGMV(流通取引総額)は伸びており、非常に注目されていることが伺えます。

みっちー:中国の例から見ても、EC化率を伸ばすためには、OMOが進んでいくことはもはや必須といえそうですね。そのため、今後日本でもOMOはますます広まっていくことが期待できそうだと思いました!

まとめ


今回は、OMOの概要とその事例について解説しました。OMOの最大のポイントは、お客様目線で一番便利な方法を選べる状態を実現する施策で、UXと非常に近い考え方ということです。

実際にOMOを実現させるためには、店舗とECの顧客データを統合させることは必須となります。その点から、ECシステムはShopifyがオススメです。Shopifyがオススメの理由や魅力については別の記事でご紹介します。

寄稿者プロフィール

東口 美睦

株式会社フィードフォース App Unityチーム

フィードフォースへ新卒入社し、データフィード管理ツール「dfplus.io」のセールスを担当。その後、App Unityチームに参加し、Shopifyストアの集客やCRM運用の支援サービス・App UnityのYouTubeチャンネル開設に携わる。