2023年7月14日に、「App Unity Xross ID」というシングルサインオンのソリューションをリリースしました。
我々は今後、ID活用が企業のDX戦略の一端を担う重要な取り組みになると考えており、Shopify Plus上でのシングルサインオン(SSO)を実現するだけではなく、本件を皮切りに「IDの共通化・活用」領域でお手伝いできることを増やしていこうと考えています。
本記事では、企業にとってID活用がなぜ重要になるのかという背景、その中で「App Unity Xross ID」が担う役割、そして今後の機能開発のマイルストーンについてご説明します。
「App Unity Xross ID」リリースの背景について
まず大前提として、過去マスメディアでの認知拡大と小売りチャネルに販路を頼ってきたメーカーであっても、今やダイレクトチャネルを使ったユーザーとのコミュニケーションやSNSを通じた認知、評判の広がりを無視することができない、という環境変化はもはや言うまでもないでしょう。加えてサードパーティクッキーの利用が2024年春にタイムリミットを迎え、これにより今後、消費者の嗜好や行動を把握することが難しくなることから、マーケティングへの活用目的を中心に顧客IDに紐づく形でファーストパーティデータを戦略的に蓄積・活用したいと考える企業が増えるのはごく自然なことです。
また、デジタル広告領域に目を移すと、ターゲティング広告の分野においてはCAPIのようなサードパーティクッキーの代替ソリューションは、導入ハードルの高さの割には限定的な効果しか期待できず、本質的な解決策として、ファーストパーティデータとデータクリーンルームの組み合わせで、媒体と企業のユーザーをsyncする手法が主流になるだろうという見方が大勢を占めています。
さらに昨今の生成AIの急発展から、顧客情報や商品情報などその企業にとっての固有のデジタル資産を生成AIと組み合わせることで、商品開発/顧客ニーズ分析/プロモーション/CRM/サポートなど顧客バリューチェーンの各プロセスにおいて、今までとは違うレベルでの施策の実行が可能になるであろうことを考えると、顧客IDとその裏側にあるファーストパーティデータの蓄積・活用が企業のDX戦略の一端を担うことになるのはもはや疑いようがないといえます。
実際、このような背景のもと、食品、飲料、トイレタリーなどのメーカーやアパレルなどの小売のサイトで、自社の持つ複数のブランドサイトを横断して使うことができる各社独自の「ブランドの共通ID」を提供するケースが非常に増えています。
IDソリューションの第一弾である「App Unity Xross ID」は企業が管理する複数のブランドサイトに、このような「ブランド共通の顧客ID」でのログイン(シングルサインオン)を実現するソリューションとしてリリースしました。
「App Unity Xross ID」のユースケース
今回の「App Unity Xross ID」は、Shopify Plusのソリューションとして提供しています。あまたあるコマースプラットフォームの中でなぜ、Shopifyなのでしょうか?
シングルサインオンとShopifyの組み合わせが非常に重要な役割を果たすことを、実際のユースケースを踏まえ紹介します。
組織上の役割分担に沿った運用を可能に/全社的なDX推進部門と各ブランド部門での役割分担
共通IDやファーストパーティデータの蓄積および活用については、その影響範囲の広さゆえ全社を横断する形でDX推進を担う部門が企画するのに対し、そこに連携する各ブランドでは、それぞれのマーケティング戦略に基づき、サイトの立ち上げ、運用、施策の実施は各ブランド事業部の現場中心で行われます。
この役割分担を柔軟に実現できる疎結合の仕組みが、DX推進部門での共通ID管理と、各ブランド部門でのShopifyでのサイト構築・管理、そしてそれをつなぐ「App Unity Xross ID」でのシングルサインオンとなります。
サイトの立ち上げが容易で、機能追加をアプリのインストールで実現でき、それゆえスモールスタートが可能なShopifyはスモールな部門での立ち上げに最適ですし、そこに対して、共通IDでのシングルサインオンをつなぎこむことで、全社的なID・ファーストパーティデータ戦略に沿わせることが可能になります。
このような役割分担がシステム構造上自然にできることで、それぞれの部門が自分のやるべきことにシンプルに向き合う環境を実現することができます。

新規事業、M&Aで事業アセットが増えていくケース
例えばD2C事業をM&Aする、新規事業でブランドを立ち上げるなど、企業の戦略に沿った形で事業アセットが増えることがあります。こうした場合、事業のシナジーのひとつの方法が会員の一元化、マージでしょう。
サイトがShopifyベースであれば「App Unity Xross ID」を使うことで、既存の会員資産の活用がスムーズに進み、その後の事業のドライブにも大きな推進力となります。
ID活用をベンダーロックのないプロジェクトにする
シングルサインオンの導入やそれを使った新サイトの構築が一部の事業者でしかできないような構造になっていると、そのシングルサインオンを活用したサイトやシステムの拡張は、そのベンダーのキャパシティが上限となってしまいます。Shopifyを使ったSSOの仕組みである「App Unity Xross ID」であれば、Shopify Plusのパートナーがアプリを導入するだけで、対応することが可能です。またShopify Plusのパートナーは国内にも数多くいますので、開発キャパシティによって事業の成長スピードを妨げられることがありません。
CRM、OMO、ポイント、コミュニティなどもシームレスに連携
Shopifyの強みのひとつは、機能の豊富さにあります。SNS連携やポイント、OMOなど各種機能をアプリによって加えることが可能です。
「App Unity Xross ID」であれば、こうした各種機能とシングルサインオンとの組み合わせにより、さらに顧客利便性を高めることが可能です。また、利便性の提供とともに連携によるファーストパーティデータの蓄積も進み、それを元にさらなる利便性の向上を果たすことができるようになります。
組み合わせ例 ・ポイントを複数サイトを横断して、蓄積、利用することができる ・コミュニティもID連携することで、ポイントやランクを反映させられるようにする ・サイト間のSSOのみならず、店舗とコマースをも横断して顧客管理ができる ・LINEのIDとも連携し、LINEでの適切なコミュニケーションを可能にする など。
機能開発のマイルストーン
今回リリースのShopifyへの共通IDへのシングルサインオン機能を皮切りに、今後、ID共通化・活用領域での機能開発として、ShopifyのIDを共通IDにするIDP機能、そのデータを蓄積するCDP機能、そしてそのデータを外部のプラットフォームと安全にsyncするDCR(データクリーンルーム)連携機能まで一気通貫で提供できるようにしたいと考えています。加えてLINEやメールによるCRM、ポイントやランクプログラム、店舗やアプリとの連動、 コミュニティツールとの連携も強化し、ID、ファーストパーティデータ活用にまつわる様々なニーズに応えられる状態を目指します。
ちなみに、このプロダクトはFRACTA、Rewire、フィードフォース / App Unityによる共同プロジェクトで、フィードフォースグループのシナジーを最大限に発揮した新たなプロダクトシリーズの一つとなります。
今後も、フィードフォースグループのシナジーを活かしたプロダクト、サービスを次々とリリースしてまいります。

お気軽にご相談ください
現状、各企業のDX推進のご担当部署とお話させていただく機会が非常に増えており、顧客ID統合とその活用についてはどの企業においても成長戦略の中核として位置づけている一方、難易度の高さゆえにどうやって進めればいいのかと頭を悩ませている企業様も少なくありません。
我々も、こうした企業の皆様と一緒になってID統合、活用のベストプラクティスを考え、そしてそれをスピーディに実現できるソリューションを提供していきたいと考えております。
ぜひ一度お話をお聞かせいただき、実現について一緒に考えさせてください。
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寄稿者プロフィール
塚田 耕司
株式会社フィードフォース 代表取締役
京都大学工学部卒。2006年に企業向けのデジタルマーケティング支援サービスを提供する株式会社フィードフォースを設立し、代表取締役に就任(現任)。