近年、企業は顧客体験の最大化を目指すためにDXを積極的に推進しており、これは企業の中長期経営計画の中でも重要なテーマとなっています。今後、顧客との関係を更に深め、個別最適化された顧客体験を提供するために組織体制の見直しを含めて新たな方法を模索しています。

その中で、企業自身が収集し保有する「ファーストパーティデータ」が注目を集めています。ファーストパーティデータは、顧客の行動や選好に関する情報を含み、有効に活用することによって、より精緻なマーケティング戦略や商品開発が可能となります。

本稿では、ファーストパーティデータの重要性と活用戦略をメインにご紹介します。

ファーストパーティデータとは


ファーストパーティデータの概要

ファーストパーティデータとは、企業が自社の顧客やWebサイト訪問者に関連する情報として収集・保有する企業独自データを指します。ファーストパーティデータの入手方法は、企業独自の施策によるものであれば、オンライン・オフラインを問いません。具体的には以下のようなものがあります。

  • 自社ウェブサイト・アプリに会員登録したユーザー情報や問い合わせ、見込み顧客や顧客の情報
  • 自社顧客の購買履歴や行動履歴
  • 展示会、イベント出展のアンケート結果と分析データ
  • セミナーで収集した名刺データや参加者のコメント

データの種類

企業が取得できるクッキーは大きく3種類に分けられ、ファーストパーティデータの他に、セカンドパーティデータ、サードパーティデータがあります。

ファーストパーティデータ(1st Party Data)
前述しているように、自社の顧客情報や社内で保有している一次データを指します。

セカンドパーティデータ(2nd Party Data)
他社が収集・保有するファーストパーティデータを指します。他社のデータになるため、購入したり、パートナー企業と共有するケースもあります。自社以外のソースからデータを得られるという点がファーストパーティデータとの大きな違いです。セカンドパーティデータの例には下記があります。

  • ウェブサイト履歴
  • ソーシャルデータ
  • 顧客サーベイ
  • 視聴データ

出版社やメディア企業などが広告主に販売しているケースもあります。

サードパーティデータ(3rd Party Data)
自社データやパートナーデータ(セカンドパーティデータ)以外の、いわゆる第三者が提供する外部のデータを指します。政府や地方自治体が行っている大規模調査の統計データ、リサーチ会社などを通じて得られたデータが代表的なものです。

サードパーティデータは、自社とは関連がない第三者機関で収集したものです。懸念事項としては、調査対象の属性が自社の利用目的と合致していない可能性があります。データの信憑性や質という観点でも、調査元となる機関の信頼度を事前に確認しましょう。

ファーストパーティデータの重要性が高まる背景


ファーストパーティデータの重要性が高まる背景には、いくつかの要因が影響しています。中でも最も大きな要因として、「クッキー(Cookie)規制」が挙げられます。

私たちが日々閲覧するWebサイトでは、会員情報や買いものかごに入れた商品の情報などを一次的に記録・保存するためにクッキーの仕組みを活用しています。しかし、昨今におけるプライバシー保護の観点から、Safari、Google Chrome、Firefoxなどのブラウザがクッキー規制に向けた対応をしています。そのため、今後はサードパーティデータの利用が難しくなり、相対的にファーストパーティデータの重要性が高まっています。

次にもう少し掘り下げて、主な背景をいくつかご紹介します。

  1. プライバシーとデータ保護の懸念
    個人情報保護法や一般データ保護規則(GDPR)などの法律が厳格化し、ユーザーの個人情報を適切に保護することが求められています。これにより、企業は第三者データの使用に慎重になり、ファーストパーティデータの活用が増えています。
  1. データ所有権と制御の重要性
    ファーストパーティデータは企業自体が収集し所有しているため、そのデータの利用方法を制御することが容易です。これにより、企業は自社の戦略やニーズに合わせてデータを活用しやすくなります。
  1. 精度の高いデータの提供
    ファーストパーティデータは、ユーザー行動や購買履歴などの正確で詳細な情報を含んでいる傾向があります。そのため、顧客の行動パターンをより正確に把握し、戦略的な意思決定に活用できます。
  1. パーソナライゼーションと顧客体験の向上
    ファーストパーティデータは、顧客に対してより個別化された体験を提供するための基盤となります。顧客の好みや興味を理解し、適切なターゲティングやユーザーに合わせてカスタマイズされたコンテンツを提供できるようになります。
  1. データの信頼性と透明性
    ファーストパーティデータは、データの収集方法や品質についての透明性が高い傾向があります。これにより、企業と顧客との間に信頼関係を築くことができます。

これらの要因により、ファーストパーティデータは企業戦略においてますます重要な役割を果たすようになっています。

ファーストパーティデータの具体的な収集方法


ファーストパーティデータを収集するためには、企業は顧客との関わりを通じてユーザーからの同意・許諾を得たうえでデータを収集し、お預かりするというイメージで保管するプロセスを構築する必要があります。以下に具体的な収集方法をご紹介します。

ウェブサイトトラッキング

ウェブサイト上でのユーザー行動をトラッキングしてデータを収集します。Google Analyticsや他のウェブアナリティクスツールを使用して、ページビュー、クリック、コンバージョン率などのデータを収集できます。

クッキーとトラッキングピクセル

ウェブサイト上でクッキーやトラッキングピクセルを使用して、ユーザーの行動をトラッキングします。これにより、ユーザーがどのページを訪れ、どのコンテンツに興味を示したかを把握できます。

アカウント登録とプロフィール情報

ユーザーにアカウント登録を促し、プロフィール情報を提供してもらうことで、個々の顧客の属性情報や好みを把握することができます。これによって、よりターゲットに合ったコンテンツを提供できます。

購買履歴の記録

オンラインストアやアプリ内での購買履歴を記録し、どの商品がどれだけの頻度で購入されているかを追跡します。これによって、顧客の好みや購買パターンを理解できます。

ウェブフォームとアンケート

ウェブサイトやアプリ内でアンケートやフォームを提供し、顧客のフィードバックや意見を収集します。これによって、顧客のニーズや要望を把握し、サービスやプロダクトの改善に役立てることができます。

顧客対話とコミュニケーション

メール、チャット、ソーシャルメディアなどを通じて顧客とコミュニケーションを取ることで、顧客のフィードバックや要望を把握できます。また、コミュニケーション履歴から顧客の関心を把握し、パーソナライズされたコンテンツを提供できます。

これらの収集方法は、顧客のプライバシーとデータ保護に配慮しながら実施する必要があります。法的規制とファーストパーティデータのあるべき姿を前提とした倫理的な考慮事項に留意しながら、適切なデータ収集プロセスを構築することが重要です。

ファーストパーティデータの活用戦略


企業がファーストパーティデータを活用する際に考慮すべき戦略は多岐にわたります。以下に具体的な活用戦略の一部をご紹介します。

顧客セグメンテーションとターゲティング

ファーストパーティデータを活用して、顧客を特定のセグメントに分けることができます。購買履歴、行動データ、興味関心などを分析し、顧客の特性や行動パターンに基づいてターゲットセグメントを定義します。その後、ターゲットセグメントに対してパーソナライズされたマーケティングコンテンツを提供します。

顧客エンゲージメントの向上

ファーストパーティデータを活用して、顧客とのエンゲージメントを向上させる取り組みが可能です。購買履歴やウェブサイトの行動データに基づいて、顧客に関連するコンテンツや製品を提案することで、顧客が興味を持つ可能性が高まります。

プロダクト開発と改善

ファーストパーティデータを活用して、顧客のニーズや要望を理解し、プロダクトやサービスの開発および改善を行うことができます。顧客のフィードバックや行動データから洞察を得て、新しい機能や製品の方向性を決定することができます。

顧客リテンションの強化

ファーストパーティデータを活用して、顧客のリテンション(継続的な利用)を向上させる戦略を展開できます。顧客の過去の購買履歴や利用履歴を分析し、リピート購入を促進するためのアクションや特典を提供します。

クロスセルとアップセル

顧客が既に興味を持っている商品やサービスに関連するファーストパーティデータを基に、クロスセル(関連商品の提案)やアップセル(より高額な商品へのアップグレード提案)を実施します。

さいごに


ファーストパーティデータを活用する際に最も重要なのは、ファーストパーティデータそのものではなく、データから洞察を得ることで、現状とあるべき姿とのギャップを正しく把握すること、その先にいるユーザーへの理解をより深めることで顧客体験を最大化していくことであると考えています。

もし、今回の記事からファーストパーティデータの活用に関して疑問やご興味がありましたら、ぜひ私たちApp Unityへお気軽にご相談ください。豊富な経験と専門知識を持つチームが、お客様のニーズに合わせた最適な戦略を提供いたします。

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寄稿者プロフィール

川田 智明

株式会社フィードフォース データフィード事業部

データフィード作成代行サービス「DF PLUS」、EC自動集客サービス「EC Booster」立ち上げ後、現在はアライアンス業務に従事。